ねつ・が~るNo.018~

 

♦ねつ・が~る♦

 まだまだ男性比率の高い環境で活躍する女性を応援するとともに、熱処理分野に対する社会の理解を深めることを目的として、熱処理に関わる女性から、これまでの歩みを含めて自由に自己紹介いただく企画です。

 なお、自薦他薦を問わず“ねつ・が~る”を随時募集しています。ご興味のある方は中部支部事務局(info★jsht-chubu.jp)までご連絡下さい。
※上記の「★」記号を「@」記号に置き換えてください。

 

ねつ・が~る No.018~023
関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科
機能材料研究室の6名の皆様
 関西大学 化学生命工学部 化学・物質工学科 機能材料研究室で、熱処理・表面改質・焼結などの材料プロセスに関する研究に取り組む6名の皆さんをご紹介します。研究テーマや熱処理分野への関心、将来への想いを、50音順に掲載します。

 
掲載(50音順)

ねつ・が~るNo.018  小畑 奈々さん

●研究室の紹介
 私の所属する研究室では、金属材料の強度と靭性をともに向上させるための研究を幅広く行っています。たとえば、表面を改質して機能を高める方法や、異なる材料同士をうまく接合する技術、粉末冶金法を使った焼結材の作製、複合材料の開発、そして結晶粒を細かくして特性を向上させる材料づくりなど、さまざまなアプローチで材料の可能性を探っています。材料がどのように変化し、どんな特性を発揮するのかを一つひとつ確かめながら研究を進めていく研究室です。

●研究テーマとその面白さ
 粉末冶金法を応用したハイエントロピー合金の焼結をテーマに研究しています。ハイエントロピー合金とは、複数の元素をほぼ同じ割合で混ぜ合わせてつくる、ちょっとユニークな合金です。組成が複雑な分、これまでにない強さや硬さを示すことがあり、近年とても注目されています。私の研究では、原料となる粉末をどのくらいの時間混ぜ合わせるかに注目しています。粉末冶金法では、この混合の具合が材料の仕上がりに大きく関わってきます。混ぜ方が不十分だと材料の特性が十分に発揮されず、逆に時間をかけすぎても効率が下がってしまうことがあります。そこで、必要な硬さをしっかり満たしつつ、できるだけ無駄のない作製条件を探ることを目標に、さまざまな条件で試作と評価を繰り返しています。条件を少し変えるだけで材料の性質が大きく変わることもあり、その変化を自分の目で確かめられるところに、この研究の面白さを感じています。

●熱処理分野への興味と将来像
 将来は、これまでの材料開発の経験を生かして、高性能でありながらコストも抑えられる材料を活かしたモノづくりに携わりたいと考えています。研究を進める中で、日本熱処理技術協会講演大会で2回発表する機会にも恵まれました。発表の準備や質疑応答を通して、自分の研究をどのように伝えるかを考える大切さや、専門家の方々からいただく意見の重みを実感し、研究に向き合う姿勢がより深まったように感じています。 焼結や熱処理といった基盤技術は、ものづくりを支える欠かせない存在です。研究室で身につけた知識や感覚、そして発表を通して得た学びを大切にしながら、材料が持つ新しい可能性を広げていける技術者を目指していきたいと思っています。

 

 

ねつ・が~るNo.019  杉山 凛さん

●熱処理との出会い
 学部時代から金属材料や表面改質技術に興味を持ち、特に熱処理によって材料の特性が大きく変化することに魅力を感じてきました。同じ材料であっても、処理温度や時間、雰囲気を変えるだけで硬さや耐食性などの性能が向上する点は非常に奥深く、現在も研究を進める中でその面白さを実感しています。

●研究テーマについて
 現在は「Niスクリーンを用いた二相系ステンレス鋼に対するS-DCPN(Screen-assisted Direct Current Plasma Nitriding)処理」に関する研究を行っています。研究対象である二相系ステンレス鋼は、高強度と高耐食性を兼ね備えた優れた材料ですが、表面硬さの向上が課題の一つです。そこで、Niスクリーンを用いたS-DCPN処理によって、耐食性を維持しながら表面硬さを向上させることを目指しています。研究では、処理条件によるS相形成挙動や組織変化、硬さ分布、耐食性への影響などを評価しています。試料作製から組織観察、XRD分析、腐食試験まで幅広く取り組んでおり、予想と異なる結果が得られたときには原因を考察しながら研究を進めることにやりがいを感じています。また、2025年には日本熱処理技術協会講演大会において研究成果を発表する機会をいただきました。初めての学会発表で緊張しましたが、多くの研究者や技術者の方々からご質問やご助言をいただき、自身の研究を客観的に見つめ直す貴重な経験となりました。同時に、大学だけでは得られない産学のつながりや熱処理分野の広がりを実感し、さらに研究への意欲が高まりました。

●今後の目標
 熱処理技術は、自動車、エネルギー、機械部品など多くの分野を支える重要な基盤技術です。今後も研究活動を通じて材料や熱処理に関する知識を深め、材料の高機能化や長寿命化に貢献できる技術者・研究者になりたいと考えています。また、学会活動や研究発表にも積極的に参加し、多くの方々との交流を通じて視野を広げていきたいと思います。

 

 

ねつ・が~るNo.020  徐 藝菲さん

●来日のきっかけ
 私は関西大学大学院理工学研究科に所属し、機能材料研究室で研究を行っています。学部時代は中国で冶金工程を専攻し、金属材料の製造プロセスや組織制御について学びました。その中で、材料表面のわずかな変化によって性能を大きく向上させることができる表面改質技術に興味を持つようになりました。進学先を検討する中で、現在の研究室が独自のプラズマ窒化技術を用いた研究を行っていることを知り、この分野についてさらに学びたいと考えて日本への留学を決意しました。

●現在の研究内容とその面白さ
 現在は、ニッケル基耐熱合金のプラズマ窒化による表面改質に関する研究を行っています。耐熱合金は高温環境で使用される重要な材料ですが、用途によってはさらなる表面硬化や耐摩耗性の向上が求められます。私はプラズマ窒化条件と材料特性の関係を明らかにし、より効果的な表面改質技術の実現を目指して研究を進めています。

 研究の面白さは、処理温度や時間などの条件がわずかに変わるだけで、材料の組織や特性が大きく変化することです。実験結果が予想通りにならないことも少なくありませんが、その原因を考察しながら材料内部で起こっている現象を理解していく過程に大きなやりがいを感じています。また、一見すると小さな組織変化であっても、それが材料の性能向上につながる可能性がある点に、表面改質技術の奥深さと魅力を感じています。

 日本に留学してからは、研究を通じてさまざまな背景を持つ学生や研究者と交流する機会に恵まれました。異なる視点から意見を交換することで、自分では気付かなかった考え方や研究への取り組み方を学ぶことができ、視野が大きく広がったと感じています。また、大学での研究と実際のものづくりとの結び付きの強さにも魅力を感じています。今後は研究活動を通じて培った知識や経験を活かし、鉄鋼・材料分野に携わる技術者として、ものづくりの発展に貢献していきたいと考えています。

 

 

ねつ・が~るNo.021  趙 芙瑶さん

●来日のきっかけ
 私は中国の山東省出身で、現在は関西大学大学院理工学研究科の機能材料研究室に所属しています。学部では鋳造工学を専攻し、金属材料の製造や加工について学びました。もともと材料分野に興味がありましたが、より専門的な知識を身につけたいと思い、日本への留学を決めました。機能材料研究室では、熱処理や表面改質をはじめとする材料プロセスに関する研究が行われています。研究室にはさまざまな分野や国・地域から集まった学生がおり、実験やゼミを通じて多くのことを学んでいます。研究について意見交換する機会も多く、自分とは異なる視点に触れられることが研究室の魅力だと感じています。

●現在の研究内容とその面白さ
 現在はハイエントロピー合金の放電プラズマ焼結に関する研究に取り組んでいます。ハイエントロピー合金は近年注目されている新しい金属材料の一つであり、優れた特性を持つことからさまざまな分野への応用が期待されています。私はその作製プロセスに着目し、焼結条件が材料の組織や特性にどのような影響を与えるのかについて調べています。

 研究を始める前は、材料の性質は主に成分によって決まるものと思っていました。しかし実際には、作製プロセスによって材料の特性が大きく変化することを知り、その奥深さに魅力を感じています。材料の可能性を引き出すプロセス技術に興味を持ち、これからさらに学びを深めていきたいと考えています。

 熱処理や焼結などの材料プロセス技術は、材料の性能を大きく左右する重要な技術です。大学院で研究を進める中で、材料そのものだけでなく、その性能を引き出すプロセスの重要性を実感するようになりました。将来は材料開発や生産技術に携わり、研究で得た知識や経験を実際のものづくりに活かせる技術者になりたいと考えています。

●日本での生活について
 研究以外では、日本での生活を通してさまざまな文化や価値観に触れることも楽しみの一つです。留学生活では言語や研究など苦労することもありますが、新しい環境で学べることに感謝しながら日々過ごしています。これからも研究に真摯に取り組み、自分自身も成長していきたいと思います。

 

 

ねつ・が~るNo.022  村田 知花さん

●研究室の紹介と現在の研究内容
 私の所属研究室では、プラズマ窒化などの表面改質技術や、放電プラズマ焼結による新材料創生などを幅広く研究しています。その中で私は、自動車部品等の長寿命化に向け、硬くて滑りやすい「炭素薄膜(DLC)」のコーティング技術の研究に挑戦しています。 一般的にDLCは軟質金属への施工例が多いですが、基材が硬いほど膜に大きな歪みが生じて剥がれやすい課題があります。そのため、熱処理により高硬度化した「高強度ステンレス鋼(SUS420J2)」への適用は世の中にも報告例が極めて少ないのが現状です。 そこで私は、この剥がれやすさを克服するため、基材と炭素膜の間にシリコンを挟む「二層構造」を取り入れました。現在は、真空装置を用いてガス等の成膜環境を変化させ、試行錯誤しながら膜をつくる実験を行っています。先行研究が少ない未踏の領域だからこそ、自分で立てた仮説をもとに、最適なプロセスを自らの手で組み立てていく工程に、ものづくりの原点のような面白さを感じています。

●熱処理分野への興味と将来像
 現在は、始まったばかりのテーマとして、できあがった膜の特性を評価し、成膜環境との関係性を一つずつ解き明かしている最中です。まずは地道なデータ収集を重ね、狙い通りの炭素被膜を安定してつくれる最適環境の確立を目指しています。

 研究室で様々な表面改質や材料創生に触れる中で、材料の性質を最大限に引き出す「熱処理」と、表面を保護する「コーティング」の融合こそが、産業を根底から支える鍵だと実感し、この分野への興味が深まりました。

 将来的には、ここで培った知識やプロセスを活かし、過酷な環境で使われる機械部品の長寿命化に貢献し、カーボンニュートラルや省資源化を支えるエンジニアを目指します。

●オフの過ごし方
 休日は野球観戦でリフレッシュしています。ピンチでも諦めない選手たちの姿から前向きなパワーをもらい、日々の研究への粘り強さに活かしています。

 

 

ねつ・が~るNo.023  山崎 香音さん

●研究室の紹介と現在の研究内容
 私が所属する機能材料研究室では、金属材料を中心に、熱処理や表面改質による特性向上に関する研究を行っています。材料の組織観察や各種特性評価を通じて、材料の性能発現メカニズムの解明に取り組んでいます。また、学会発表や論文執筆にも積極的に取り組んでおり、私自身も2026年6月に開催された日本熱処理技術協会春季講演大会で研究成果を発表し、多くのご意見をいただく貴重な機会となりました。

●研究テーマとその面白さ
 私の研究テーマは、プラズマ窒化によるステンレス鋼の表面改質です。金属表面に窒素を浸透させることで硬さや耐摩耗性を向上させながら、耐食性も維持することを目指しています。現在は複数のステンレス鋼を対象に、窒素の拡散挙動や特性変化について調査しています。 研究の面白さは、材料ごとに異なる反応を示す点です。同じ条件でも結果が変化するため、実験結果から原因を考察し、新たな条件を試しながら最適解を探していきます。自分の予想通りの結果が得られたときや、新しい知見が得られたときに大きな達成感を感じます。

●材料分野に興味を持ったきっかけ
 私は幼い頃から理科や数学が好きで、大学では工学を学びました。その中で金属材料に興味を持ち、現在の研究室に所属しました。講義や実験を通じて、同じ金属でも組成や処理方法によって特性が大きく変化することを知り、材料分野の奥深さに魅力を感じるようになりました。特に、熱処理や表面改質によって材料の性能を向上させる技術に興味を持ち、現在の研究につながっています。また、熱処理は製品の性能や寿命を支える重要な技術でありながら、普段は目に見えない部分で活躍している点にも魅力を感じています。

●将来像
 将来は、熱処理や表面改質に関する知識を活かし、材料の性能向上や長寿命化に貢献できる技術者になりたいと考えています。研究で学んだ材料の特性評価や課題解決の経験を活かしながら、社会を支える製品づくりに携わることが目標です。また、常に新しい知識を吸収し、周囲と協力しながら挑戦を続けられる技術者を目指しています。